コロナ禍では、日本のデジタル化の遅れが浮き彫りになりました。今後、官民があらゆる分野でデジタル化を推進していくことにより、非常時であっても便利で質の高い生活が送れるようになるはずです。5月には「スーパーシティ法案」が成立し、国としても“未来都市”の構築に力を入れていく考えです。今回はデジタル化やスーパーシティに向けて取り組む、自治体の例をご紹介します。
キャッシュレス決済に先陣を切った自治体
中国や韓国に比べると、日本ではキャッシュレス決済が浸透していません。昨年10月の消費増税を機に、政府はポイント還元するカタチでキャッシュレス決済の普及に乗り出しました。民間では徐々に広がりがみられる一方、自治体ではまだまだ進んでいません。住民票の手数料など自治体では少額決済が多く、導入によって窓口の混雑緩和をはじめ、さまざまなメリットがもたらされるでしょう。
ただ、なかにはすでに脱現金化に舵を切った自治体もあります。群馬県富岡市は昨年秋より、市役所の窓口でQRコードやクレジットカードでの支払いを可能とし、世界遺産の富岡製糸場にも導入しました。問題は決済事業者に支払う手数料の扱いですが、条例の改正はせず、会計上の区分を明確にして対応したとのことです。
ほかにも大阪府豊中市は今年3月に市民課の窓口手数料のキャッシュレス化を果たし、茨城県行方市は今年度中に総合窓口での導入を目指すとしています。
国が本腰を入れて取り組むスーパーシティ
キャッシュレス化に目を向ける自治体が出てくるなか、政府は今年5月に「スーパーシティ法案」を成立させました。スーパーシティとは、AIやビッグデータを活用した“未来都市”を生み出すための実証実験で、国家戦略特区制度を活用し、公募によって世界最先端の実装ができるまちをつくります。
いままでのように分野ごとに実証実験をおこなうのではなく、スーパーシティでは次の10領域のうち最低でも5つをカバーすることを応募の条件としました。
①移動 自動走行、データ活用による交通量管理など
②物流 自動配送、ドローン配達など
③支払い キャッシュレスなど
④行政 ワンスオンリー(一度提出した書類が活用される)など
⑤医療・介護 AIホスピタル、オンライン診療など
⑥教育 遠隔授業など
⑦エネルギー・水 データ活用によるスマートシステムなど
⑧環境・ゴミ データ活用によるスマートシステムなど
⑨防災 緊急時の自立エネルギー供給など
⑩防犯・安全 ロボット監視など
デジタル化で非常時に強いまちへ
- スーパーシティの公募は、昨年9月からスタート。今年12月に指定地域を決定するつもりでしたが、新型コロナウイルスの影響によって2021年3月に延期しています。今年6月の段階では、56団体から応募がありました。
そのうちの1つに、群馬県前橋市があります。前橋市はマイナンバーカードやスマートフォンなどを活用し、キャッシュレス決済やオンライン授業、遠隔診療などを可能にするほか、来庁せずとも行政手続きができるようにする計画です。
古い内部規則や慣行が強く、自治体がデジタル化を進めるには相当なハードルがあるでしょう。しかし、今後第3波がやってきたり、新たな感染症や、大きな災害が起きるとも限りません。前橋市が構想しているようなまちが実現すれば、平常時の利便性はもちろん、非常時に強いまちへと進化するはずです。
仮にスーパーシティに指定された場合は、約1年かけて計画を作成し、住民投票などで地域の同意を得て具体案を決定、2022年度以降に着手することとなっています。したがって、スマートシティを進めるには住民の理解や協力が不可欠だということです。しっかり協力を得るには、自治体側からの十分な説明や情報提供も必要といえます。
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