ロケ誘致に的を絞った熱海市の観光戦略

コラム

2019/11/30

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2019/11/30

ロケ誘致に的を絞った熱海市の観光戦略

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かつて、日本屈指の温泉地として人気を博した熱海。しかし次第に観光客は減少し、若者のなかには旅行先の候補地として熱海が思い浮かばない人もいるようです。そうした事態を解消し、かつてのにぎわいを取り戻そうと取り組んだのが、テレビのロケ地としてメディアを呼び寄せる戦略です。それが効果を発揮し、観光客はV字回復しています。

メディアでの露出を増やす

客足が遠のいた熱海に人を呼び戻したい。そう考えて同市がおこなっていたのは、年間を通したイベントでした。ただイベントが集中するのは、ゴールデンウィークや夏休み、年末年始といった観光シーズン。多くの人々が訪れたと感じても、そもそも観光客が多い時期のため、年間を通しての来訪者は増えていなかったり、熱海好きを増やすことにはつながっていなかったのです。
  
どうすれば熱海の素晴らしさをもう一度感じてもらえるのか。知恵を絞ってたどり着いたのが、『ADさん、いらっしゃい』という企画でした。この企画はテレビのバラエティ番組やドラマ、映画などのロケ地として、熱海を利用してもらおうというもの。露出を増やすことで熱海のよさを再認識してもらったり、名前を再認知してもらおうと考えたのです。

至れり尽くせりでロケ数も観光客も増加

具体的な施策としては、番組の企画を聞き、それに合致したロケーションや施設の情報を提供。また店舗との取材交渉や撮影車両の移動ルートの案内、エキストラ出演できそうな地元住民の紹介などをおこないました。さらには、ロケ弁の手配や宿泊先の案内なども実施。時には「コスト削減のため宿代は安くしたい」「大御所が来るので少しいい宿にしたい」といった要望もありましたが、それらに細やかに応えたのです。
  
市の担当者が意識していたのは、「ロケスタッフをあたかも顧客のように扱うこと」だったといいます。その甲斐あって、それまで年間20〜30本だったロケの本数が、3〜4年の間に100本を超えるまでになりました。特に人気のある番組放送終了後は、SNSなどで「熱海」のワードが急増。観光地としてのPRに大いにつながりました。

  • ロケの本数が増えるのに合わせ、宿泊客の数も増加。1991年には年間約450万人いた宿泊客が2010年には260万人にまで減っていましたが、2015年には14年ぶりに300万人を超えたということです。

正攻法だけではなく時には違った視点も

熱海はもともと「温泉宿が豊富」「首都圏から近い」「海も山もある」など、観光資源に恵まれています。しかしながらその強みに改めて気づくこと、そしてそれをうまく伝える方法を工夫することが大切だといえるでしょう。
  
最近ではSNSが発達し、無料で情報発信できるようになりました。それらを駆使することで、自治体の魅力を届けられる可能性は一層高まります。ほかにも様々なアプリが登場していますので、情報を集めてみるのもよさそうです。
  
さらに正攻法でうまくいかなかったら、時にはナナメや後ろなど、360°あらゆる方向から考えてみることも必要かもしれません。直接の観光客を増やすイベント施策から離れ、まずはメディアでの露出を増やすという熱海市の視点は、いろいろと応用できそうです。

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