【専門家コラム Vol.34】世界レベルの体験型アクティビティで訪日客を誘致、キャニオンズの取り組み

コラム

2019/01/15

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2019/01/15

【専門家コラム Vol.34】世界レベルの体験型アクティビティで訪日客を誘致、キャニオンズの取り組み

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執筆:やまとごころ編集部

世界的な観光の需要が「モノ消費」から「コト消費」へと移行する中、群馬県みなかみ町にはラフティングやキャニオニング、スノースポーツなどの体験型アクティビティを求めるインバウンド客が急増している。人口わずか1万8,000人のこの町に年間約3万人もの外国人が訪れるきっかけを作ったのが、同地を拠点とするツアー会社「キャニオンズ」を創設したマイク・ハリス氏だ。今回は、世界での競合を視野に入れたマーケティングでインバウンドを誘致する同社にフォーカスし、これまでの取り組みを紹介する。

キャニオニングを日本に輸入し、インバウンド客を獲得

群馬県の最北に位置し、利根川や谷川岳などの美しい自然を誇るみなかみ町。風光明媚なこの町に魅了されたニュージーランド出身のハリス氏は、2000年にキャニオンズを創設し、ヨーロッパ発祥の「キャニオニング」を初めて日本に輸入したパイオニア的存在でもある。キャニオニングとは、身ひとつで渓谷を登ったり、滝壺に飛び込んだりするアクティビティだ。設立当初は都心に住む日本人の若者をメインターゲットとしていたが、彼らには「水遊びをするのは7月〜9月の夏場だけ」という固定概念があることを知り、外国人観光客も視野に入れるようになった。優秀なスタッフを継続雇用するためにも、年間を通じたツアー提供と外国人の集客に踏み切ったのだという。

世界各国のライバルと比較し、自分たちの強みを分析する

その結果、同社では現在、4〜10月にラフティングやキャニオニングで1万2,000人を集客、そのうちの3割を外国人観光客が占める。また、冬場は英語によるスキースクールや、スノーシュー、スノーキャニオニングなどで1万6,000人を集客し、そのうちの9割が外国人観光客だ。ハリス氏によると、体験型プログラムを提供する際に気をつけている点は、世界の中で自分たちの立ち位置を考えることだという。体験型プログラムを目的とした世界の観光客は、日本、スイス、ニュージーランド、カナダといった選択肢を視野に入れているため、ライバルのプログラムの特徴や価格帯を精査し、自分たちの強みを洗い出す必要がある。それを分析した上でターゲットを定め、価格を決めていくという。

外国人観光客のニーズと商品のマッチング

このように自分たちの立ち位置を分析し、良い商品を作ったとしても、観光客に来てもらわなければ意味がない。ハリス氏は外国人観光客のニーズと観光資源をマッチングさせるプロセスが重要だと語る。例えば「オーストラリアの20代」「台湾のファミリー層」「韓国の大学生」など、細かい市場ごとの需要やトレンドを把握するために、同社では在日外国人へのヒアリング、海外の旅行会社やインターナショナルスクールへのヒアリングと商談、競合他社のプログラムへの参加などを実施している。「韓国人観光客が多く訪れている」と聞きつけ、韓国マーケットを把握するために、スイスのリゾート地インターラーケンに出向いたこともある。このようにネットワークを駆使して生の声を聞き、彼らのニーズと自社の商品をマッチングすることで顧客獲得に繋げている。

ハリス氏(写真)は、世界の旅行産業が成熟化していく中で、ワールドクラスを意識しないと勝ち残れないという。一方で、スタッフと共に地域でボランティア活動に取り組み、自身はみなかみ町観光協会の理事を務めるなど、地元への貢献度も高い。実際、2011年に2,266人だった同町の訪日客数は右肩上がりに成長し、2017年にはおよそ13倍となる3万人を突破している。グローバルな視点を意識しながら、ローカルで活動を展開するキャニオンズの快進撃は、まだまだ続きそうだ。

取材協力:
株式会社キャニオンズ
群馬県みなかみ町役場

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