執筆:村山慶輔/株式会社やまとごころ 代表取締役
前回はインターネットの重要性と自社サイトについて話をしました。今回はフェイスブックやインスタグラム、ウェイボーなど、今やあらゆる場面で欠かせないSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をインバウンドビジネスで利用する際に大切なポイントをお話ししたいと思います。
今や3人に1人が利用するSNS
インバウンドビジネスでSNSを利用する目的は、大きく分けて二つ、「情報発信」と「口コミ拡散」です。両者の違いといえば自発性の所在です。前者は情報を出す業者側にありますが、後者は一般消費者(ユーザー)にあります。この二つは相互作用があり、切り離せるものではありませんが、ここではビジネスの情報発信ツールとしての側面を見ていきます。
インバウンドビジネスでSNSを使う一番のメリットは、お金をかけずに容易に世界中に数多くいるSNS利用者に対して、自分たちの情報を発信できることです。SNSは今や世界の3人に1人が利用しています。例えば台湾では、「国民の約75%がSNSのユーザー」というデータがあり、台湾の人たちからは「お金はなくてもいいけれど、SNSがなくなったら困る」という声もよく聞きます。訪日外国人への調査結果でも、旅行前の情報源では、個人のブログについでSNSでの情報収集が2位に入っているほどです。
継続が肝心
この台湾の例だけでなく、今や生活に欠かせないツールとなった感のあるSNSですが、情報発信する側としては、気をつけなければいけないポイントがあります。それは「継続して運営していく」ということです。定期的な更新は自社サイトでも欠かせませんが、SNSは速報性が重要という点からも常にアップデートしていないと埋没してしまいます。
そうした状態に陥らないためにも、まず最初に運営方針をはっきりさせておくことが大切です。具体的に言えば責任者、制作担当者、使用言語、更新頻度、投稿テーマ、SNSの運営目的・目標を定めてから、実際の運営・運用を始めます。これはSNSの運営を外部委託する時にも必要なことです。手当たりばったりでは継続が難しいということを肝に命じておきましょう。
ファンを増やすために
アカウントができたら、早速投稿していきますが、どのような投稿がインバウンド客に刺さるのでしょうか。当然のことながら、質が高く洗練されたものが望まれます。特に写真や動画は「あっ」と驚かせるようなものが効果的です。見た人がこれは他の人にも見てもらいたいと思えるような、美しさ、意外性、有益性のある情報提供をしてください。
もう一つ重要なのは、言いたいことを1投稿につき一つに絞ること。明日から来店者にプレゼントがあり、さらに新商品も販売開始という場合。両方を一度に載せたら、両方とも印象に残らないということになってしまいます。伝えたいことがあるなら、二つの投稿に分けて行いましょう。
実際に来店された方にアプローチするのも大切な方法です。インターネット上の工夫だけでは最初はなかなかファンを増やせませんが、目の前に来てくれた方と直接つながれば、それが口コミとして拡散されるきっかけにもなります。会計の際にショップカードを渡してSNSをやっていることを伝えたり、お店のカメラで記念写真を撮ってあげて、SNSをフォローしてくれればすぐに写真を送りますと提案するなどして直接つながっていきます。これは飲食店でも宿泊施設でも観光スポットでもできることだと思います。まずは、ためらわずに声をかけて、ファンを増やしていきましょう。
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村山慶輔株式会社やまとごころ 代表取締役
兵庫県神戸市生まれ。ウィスコンシン大学マディソン校卒。大学卒業後、インドで半年間のインターンシップを経て、2000~06年、アクセンチュア勤務。退社後インバウンド観光に特化したB to Bサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、現在は企業・自治体向けに情報発信、教育・研修、コンサルティングなどを提供中。インバウンドビジネスの専門家として、国内外各種メディアへ出演の他、インバウンド関連諸団体の理事を多数兼任。著書に「インバウンドビジネス入門講座」「インバウンドビジネス集客講座」(いずれも翔泳社)がある。