日本各地には多様な文化財が存在しています。それを適切に「保存」しながら、より多くの人に鑑賞・体験してもらう「活用」を同時進行することで、地域振興や地方創生につなげることができます。
また文化財は活用するだけではなく、その価値を知らしめるために「発信」することも重要です。それによって観光客の増加や滞在期間の延長、満足度の向上が見込めるだけでなく、関連施設の収入増加や雇用拡大など、さまざまなメリットが期待できます。
さらに地域の文化財を活用・発信することで、住民や関係団体などがその価値を正しく認識することにもつながります。すると「この文化財を自分たちで守っていかなくては」という当事者意識が芽生え、その後の活発な取り組みを促すことにも通じます。
文化財を適切に保存したうえで、活用・発信していくことは多彩な効果をもたらすわけですが、そのまま伝えるだけでは充分でないのも事実です。つまり、より戦略的に魅力を発信する必要があるのです。そのためには「どんな人に=Whom」、「何のために=Why」、「どんなことを=hat」伝えていくかを、よく検討することが重要です。そのうえで「When」「Who」「Where」「How」「How much」を意識することが求められます。
たとえば千葉県館山市塩見地区では、集落最後の茅葺き古民家に、大学のサテライトキャンパス的な性格を持たせました。首都圏に通う大学生たちを集め、茅葺き職人の指導を受けながら、自分たちの手で葺き替えるワークショップを開催。学生は貴重な体験ができるだけでなく、集落は費用をかけずに茅葺き屋根を葺き替えることができました。
再生した茅葺き古民家では、茶人を招いて「かや茶会」をおこなったり、地元陶芸家の作品を展示したり、集落に伝わる知恵をみんなで学ぶ「かや談義」を開くなど、地元住民と学生・移住者らが交流。古民家とその周辺を継続的にケアしていくネットワークが形成されています。
- また岐阜県美濃市では、「美濃和紙」と「うだつのあがる町並み」を融合させた「美濃和紙あかりアート展」を1994年から開催。全国から寄せられた美濃和紙のあかりアート作品は、すべて町に展示しています。
第1回目の参加者は4,000人ほどでしたが、近年では10万人超が参加する一大イベントに成長しました。2002年には「第6回ふるさとイベント大賞」、2008年には「第1回ティファニー財団賞伝統文化大賞」など、賞も受賞しています。このイベントが特徴的なのは、行政ではなく、住民が主体となって実行委員会を運営していること。多くの住民ボランティアも参加し、文化財に対する理解が促進されています。
このように、文化財の魅力を戦略的に発信していくには、学生や地域住民など、いろいろな人たちを巻き込んでいく必要があるといえそうです。この機会にいま一度、自エリアの文化財の発信戦略を検討してみてはいかがでしょう。
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