【専門家コラム Vol.28】博多港をインバウンドクルーズ船寄港数日本一へと導いた、福岡市の取り組み

コラム

2018/07/17

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2018/07/17

【専門家コラム Vol.28】博多港をインバウンドクルーズ船寄港数日本一へと導いた、福岡市の取り組み

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博多港に寄港した巨大クルーズ客船と下船客を待ち受ける観光バス群

執筆:やまとごころ編集部

政府が「観光立国実現」に向けてインバウンド誘致を推進する中、クルーズ船による訪日客数の増加もその一翼を担っている。2017年における日本の港湾へのクルーズ船寄港回数は2764回、訪日クルーズ旅客数は約252.9万人といずれも過去最多を記録しており、この数字からも訪日クルーズの機運が高まっていることがわかるだろう。今回は、外航クルーズ船寄港回数が4年連続で日本一となった博多港の変遷を辿り、福岡市が手がけてきた施策を探る。

中国発クルーズ船ツアーの創成期から始めた、地道な誘致活動

博多港が躍進を遂げた背景には、日本のクルーズ市場に大きなインパクトを与えた中国発のクルーズ船を、創成期から誘致してきたことがある。日本で「クルーズ」というと富裕層やシニア層の旅というイメージが強いが、中国ではクルーズ船の格安訪日ツアーが人気を博し、より手頃でカジュアルな旅として認識されているのだ。福岡の地理的優位性により、上海発であれば4泊5日、天津発は5泊6日など、中国人の休暇事情に適した短期クルーズの行程を組むことができるのも人気の一因となっている。世界のクルーズ船社が上海に拠点を置き、クルーズ商品の販売を開始した2006年頃から、福岡市は地道に誘致活動を進め、博多港や福岡市内の受け入れ態勢を充実させてきた。

クルーズ船「MSCスプレンディダ」号、船内のカジノ

「トライ&エラー」の精神で、中国人旅行者のニーズの変化に対応

しかし、博多港が日本一の常連になるまでの道のりは決して平坦ではなかった。中国発大型クルーズ船の博多港寄港がスタートした2008年からは、一度に数千人もの観光客が下船。それに伴い課題となったのは、入国審査に時間がかかりすぎることだった。そこで博多港では、入国審査の簡略化や入国審査官の増員を実施したほか、2015年には大型クルーズ船専用のターミナル施設を完成させCIQ(税関・出入国管理・検疫)の充実を図ったことで、乗客の利便性改善に努めた。
  
また、中国資本のクルーズ船社が登場し、競争が激化し始めた2013年頃からは、中国の旅行代理店が船室を大規模に買い取る「チャーター」が急増。福岡での寄港地ツアーは決められた観光地と、旅行代理店と提携した免税店や施設などを巡るだけものが増え、市街地での自由時間を設けたツアーが激減した。マンネリ化したツアーに中国人旅行者の不満が高まり、地元では100〜200台もの観光バスによる交通渋滞も問題視された。福岡市はその対策として、2016年より寄港地観光手配予約システム「クルーズNAVI」を導入し、旅行会社全社に行程を入力してもらうことで過度な集中を分散化させることに成功。さらに、ランドオペレーターや地元の事業者を集めた説明会や商談会を開き、より自由度の高いツアー商品や体験プログラムなどの推奨を図ってきた。結果、現在では少しずつ寄港地観光の多様化が進み、FIT(個人旅行者)の数も増加傾向にあるという。

個人客が多く見込まれるラグジュアリー船の寄港に合わせ、
福岡市役所のロビーに設置される観光案内所

世界のクルーズ客を視野に、前進を続ける福岡市

福岡市による地道なクルーズ船誘致が実を結び、クルーズ業界では博多港や福岡の知名度が上がってきている。中国市場の安定化に伴い、クルーズ船寄港総数の伸び率は落ち着いてきているが、市の働きかけにより、近年では世界各地に支社を持つ船社によるラグジュアリー船の寄港が増加しており「量より質」へとシフトしつつある。また、フライ&クルーズの人気が高まり、欧米豪からの訪日客も新たなターゲットに加わるなど、ますます広がりを見せている。
  
政府は、2020年までに訪日クルーズ旅客を500万人まで増やす目標を掲げ、さまざまな施策に取り組んでいる。日本全体の寄港地のレベルアップを図るためにも、博多港で培われた知識やノウハウを全国の自治体や寄港地と共有し、クルーズの活性化を図る時期に差し掛かっているようだ。
  
取材協力:福岡市

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  • やまとごころ編集部

    株式会社やまとごころ メディア・コンテンツ事業部
    2007年より、インバウンドB to B 支援のための日本最大級のポータルサイト「やまとごころ.jp」を運営。「日本のインバウンドを熱くする」をモットーに、長年にわたりインバウンド業界に携わり続けた圧倒的な情報量と知見を活かし、インバウンド関連の最新情報を、日本全国のインバウンドに携わる企業・自治体の皆様に向けて発信し続けている。
      
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