執筆:村山慶輔/株式会社やまとごころ 代表取締役
2017年の流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれました。これはみなさんの予想通りだったのではないかと思いますが、この言葉はインバウンドでも重要なキーワードとなっています。
インスタ映えで一大観光地に
たとえば、渋谷のスクランブル交差点。もともと映画『ロスト・イン・トランスレーション』のロケ地として訪日客に人気だったところですが、訪れた人たちが撮影した動画や画像が世界的に広まったおかげで、いまや一大観光地なのはご承知の通りです。
至近の例では、弊社スタッフの住まいの近くにある世田谷の古刹・豪徳寺。招き猫が勢ぞろいした画像はとてもインパクトがあるため、数年前から外国人の姿を見かけるようになりました。特にここ数ヶ月は外国人が訪れない日はないといいます。ちなみにインスタグラムでは、#menekinekoのハッシュタグをつけた投稿が145,825件もあり、豪徳寺の招き猫の画像も数多く見受けられました。
優れた情報発信ツール
インスタグラムに限らず、フェイスブックやツイッター、ウェイボー、ウィチャットなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はインバウンドにおける情報発信ツールとして今や欠かせないものとなっています。次のグラフをご覧いただくとわかりますが、来日前の情報源としては個人ブログ(31.7%)とSNS(23.3%)が多く利用されています。しかも昨年同時期と比べるとSNSは5ポイントも増えているのが目立ちます。
私がSNSを推奨する理由はまず、自分たちが持っている魅力的なコンテンツの情報をお金をかけずに容易に届けることができるという点です。さらに、ターゲット層を狙いやすいこと、相互コミュニケーションが可能なので訪日客のニーズや不満点を把握するのにも有用であること、そしてクチコミとして拡散されるという優れた点があります。
中でも特にインスタグラムが注目されるのは、発信する情報が画像や動画であるため、日本での体験を具体的にイメージしやすいという点です。フェイスブックやツィッターがテキスト中心だったのに対し、インスタグラムに必要な言葉は拡散を促すハッシュタグに使う地名などのキーワードなど短い文章だけ。多言語で発信したい場合も、自動翻訳機で対応が可能なのも使い勝手がいいところでしょう。
実は日本政府観光局(JNTO)も、この10月にインスタグラムの公式グローバルアカウントを開設しました。「潜在訪日客および日本に滞在中の訪日客に『今の日本(旬の日本)』の良さを伝えることを目的としており、文化、自然、食、アクティビティなど、日本が持つ多様な観光素材の魅力を海外に向けて広く紹介」するとのこと。現在フォロワー数は1万4,000人で、毎日、目を引く日本の風景が更新されています。
次のグラフは主なSNSのユーザー数の一覧ですが、世界でもっともユーザー数の多いのはフェイスブックの20億人で、次にユーチューブの15億人、続いてメッセンジャーサービスが4つ入り、インスタグラムは8億人、ツィッターは3億人となっています。2位にユーチューブが入っているのが意外と思われるかもしれませんが、今や動画マーケティングは大きな広がりを見せています。
「映像は言葉の壁をいとも簡単に超えてくれる」といわれるように、動画による情報発信は、インスタグラムと同様に、言葉を介さずに魅力を伝える力があるのです。
作りっぱなしは逆効果
さて、こうして最近の傾向を見てきましたが、SNSを始めたら一番に気をつけておきたいことがあります。それは「継続して運営していく」ということ。
「アカウント開設当初は定期的に更新していたのに、担当者が異動したため最近は更新がゼロ」というようなことがもしあったとしたら、外国人からは廃業してしまったのかと思われるかもしれません。特にユーザー数1位のフェイスブックは、更新されているかどうかが一目瞭然のつくりになっています。せっかくの情報発信の場がネガティブに捉えられないように、定期的な更新を心がけたいものです。
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村山慶輔株式会社やまとごころ 代表取締役
兵庫県神戸市生まれ。ウィスコンシン大学マディソン校卒。大学卒業後、インドで半年間のインターンシップを経て、2000~06年、アクセンチュア勤務。退社後インバウンド観光に特化したB to Bサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、現在は企業・自治体向けに情報発信、教育・研修、コンサルティングなどを提供中。インバウンドビジネスの専門家として、国内外各種メディアへ出演の他、インバウンド関連諸団体の理事を多数兼任。著書に「インバウンドビジネス入門講座」「インバウンドビジネス集客講座」(いずれも翔泳社)がある。