2014年の4,482万人泊から2015年の6,637万人泊へと急激に増えた外国人述べ宿泊者数。観光庁が2017年3月に発表した「宿泊旅行統計調査(平成28年・年間値)」によれば、2016年の外国人延べ宿泊者数は、7,088万人泊でした。
伸び率は鈍化したものの、調査開始以来の最高値を記録。2007年の2,265万人泊と比較すると約3倍です。今回のコラムでは、このデータをもとに訪日外国人旅行者の旅行スタイルの特徴について探ってみます。
地方での宿泊者数が急拡大
日本を訪れる外国人は、実際にどのようなエリアに宿泊しているのでしょうか? 都道府県別の宿泊者数を比べてみると、最も多いのは東京都。次いで、大阪府、北海道、京都府、沖縄県、千葉県、福岡県、愛知県、神奈川県、静岡県と続きます。
こうしてみると、ゴールデンルートの主要観光地である東京・大阪・京都と、そのルート上にある千葉、神奈川、愛知。自然豊かな観光地である北海道と沖縄。富士山のある静岡と、とてもわかりやすい並びです。福岡がランクインしているのは、特に韓国からのクルーズ客船の寄港もあり、東アジアからの国々からの日本の玄関口として認知されているからでしょう。
一方で、前年からの伸び率を比較してみると、最も伸びたのは香川県の69.5%。次いで、岡山県、福島県、愛媛県、群馬県、島根県、青森県、佐賀県、宮崎県、長野県と続きます。
香川県の伸び率がトップというのは意外な結果と思われるでしょう。香川県にある高松空港は、ソウル、上海、台北、香港からの国際線があり、東京、札幌、沖縄への国内線がつながっています。このハブ空港としての機能が充実してきた高松空港の存在が香川県への誘客につながっていると考えられます。第2位の岡山県は、瀬戸内海を挟んで対岸にある県。高松空港を中心にして瀬戸内海や四国をまわる観光ルートが定着しつつあるのかもしれません。
地方へのインバウンド波及が加速
都道府県別外国人延べ宿泊者数構成比をみると、ひとことで訪日外国人旅行者といっても、出身地によってその傾向が異なります。
欧米の国々(アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア等)からの旅行者の宿泊地は、第1位は東京、第2位は京都で、ほぼ共通です。ですが、東アジア(韓国、中国、香港、台湾)からの旅行者の宿泊地はさまざま。東京と大阪の割合が多いのは共通していますが、上位5位までの並び順には国ごとの特徴が現れています。
上位5位以外の割合が約3割以上を占めているのは、地方を訪れるリピーター客が多い東アジアからの旅行者の傾向といえるでしょう。そのせいもあってか、三大都市圏と地方部の外国人延べ宿泊者数の伸び率を比較すると、三大都市部の4.8%に対して、地方部は13.2%とその伸び率が顕著です。
政府の観光ビジョンでは、外国人延べ宿泊者数の地方部の割合を、2020年までに50%まで高めるという目標を掲げています。さらに2030年には三大都市圏との比率を逆転させ、地方部を 60%とすることを目指しています。
2016年の訪日外国人旅行者数は2,400万人を超え、その約6割が日本を訪れるのが2回目以上というリピーター客。旅行者数だけをみれば、現状はまだまだ三大都市圏の割合が大きいですが、今後、リピーターの割合が拡大していくにつれ、日本のインバウンド観光の地方への波及が、これらのデータからも読み取ることができます。