執筆:太田正隆/JTB総合研究所 主任研究員
昭和40年代後半から50年代初頭にかけて、新宿駅東口にある「アルプスの広場」に集合し、夜行列車で八ヶ岳、南アルプスなどへ登山に行った時代があった。
夜行列車に乗る前、簡単に腹ごしらえをするために東口から西口へのガードをくぐり、終戦直後からあるという、俗称「ションベン横丁」(正式名称は西口商店街、現在のおもいで横丁である)で安くて気軽に簡単な食事とアルコールを入れて、アルプスの広場へ向かい夜行列車の順番を待つのが当時の登山者であった。
それから40年の時を経て「おもいで横丁」は昭和の味と雰囲気は変わらずに、サラリーマンや若い女性にまじって訪日観光客のメッカとなっていた。
2016年も押し迫った12月、友人と共に新宿へ行く機会があった。軽く飲むつもりで久しぶりの「おもいで横丁」へ行ってみると横丁はすっかり小綺麗になっており、以前は酔っ払いのサラリーマン天国であったが、若い女性も非常に多く、一番驚いたのが多くの訪日外国人であった。彼らは若いカップル、夫婦連れ、友人同士思しきグループなど。
狭い店内に日本人と共にカウンターですっかりご機嫌なカップル、あちこちの店内を物色しながら楽しんでいるグループ、横丁ですれ違いながら写真を撮りまくっている欧米系のみならずアジア系の外国人等。
あまりの混雑に数少ない「BAR」へ入るが、1階は満席で全員外国人、2階はちょうど6名の外人グループが帰るところで、狭い階段の途中ですら写真を撮りながらキャーキャーと降りていく。1時間ぐらいのうちに3階からも合計で10人以上の外国人が降りてくるではないか。3階があったことにも驚いたが、これほどの訪日外国人がまさかこんなところにと感動しきり。
口コミサイトや動画のアップはまさに百聞は一見にしかず、多くを語るよりも見に行くことが最速。日本人にとってもディープな場所へ多くの訪日外国人、改めて観光行動の変化に驚いた夜だった。
-
太田正隆JTB総合研究所 主任研究員
インバウンド及びコンベンションの企画運営を始め、企業ミーティング、インセンティブ、トレードショー、イベント等に長年従事。各国のMICE事情、地域のMICE戦略策定、MICEビジネス構築、誘致計画、プロモーション計画の策定やマネージメント、マーケティング等、日本における数少ないMICEのエキスパート。