コラム
2016/11/10
2016年の訪日外国人旅行者数が2,000万人を突破
日本政府観光局(JNTO)の調べによれば、2016年の訪日外国人旅行者数が2016年10月末までの累計(速報値)で2,005万人に達しました。
日本を訪れる外国人旅行者を増やそうという試みは「ビジット・ジャパン・キャンペーン」という名前で2003年から始まりました。「2010年に訪日外国人を1,000万人にする」という目標を掲げたこのキャンペーンは2013年に訪日外国人旅行者数1,000万人を達成。リーマン・ショックや東日本大震災の影響で前年比がマイナスになった年もありましたが、2012年以降、急激な増加を見せています。
急拡大の要因は、中国・韓国・台湾・香港の東アジア勢
訪日外国人旅行者数の推移を国別に見ていきましょう。
特筆すべきは東アジアからの旅行者の増加です。中国・韓国・台湾・香港からの旅行者は以前から多いのですが、ここ数年の伸びは特に顕著です。累計2,000万人突破の原動力は、東アジア勢といっても問題ないと思いでしょう。この4つの国や地域からの旅行者で、訪日外国人旅行者数全体の7割強を占めています。
特に中国の伸び率が大きいのは、ビザ発給要件の緩和と為替相場の影響によるものでしょう。中国は2017年以降もインバウンド施策の中心となるとは思いますが、外部的要因による変動の可能性も大きく一概に安心できない点もあります。日中両国の政治的な関係が安定すれば、現在のビザ緩和の政策は今後継続していきますが、両国の関係が悪化した場合、これまでの政策が大きく変わることもないとは言えません。
中国からの観光者が増え続ける今のうちに、リピーターになってもらうためのアクションを進めることが必要ではないでしょうか。
今後の拡大が期待できるタイをはじめとする東南アジア勢
タイからの旅行者の増加も、ここ数年の大きな変化です。中国と比べればその伸びは緩やかですが確実に増加し続けています。数年中に第5位のアメリカを追い越すことでしょう。
タイの伸びは、ビザ要件の緩和や為替の影響ももちろんありますが、一番の要因は今も続く経済成長により、海外旅行を楽しめる経済的余裕が生まれたことです。その結果、海外旅行を楽しむ層が、富裕層だけでなく中流家庭にも拡大。タイをはじめとする東南アジア勢の動きは今後も注目が必要です。
欧米からの旅行者には、対アジアとは別のアプローチが必要
訪日外国人旅行者というと欧米からの旅行者を想像しがちですが、現在の中心は東アジア勢。それと比べればヨーロッパやオーストラリアからの旅行者数は少ないです。だからといって、インバウンド獲得のための対策を打たなくてもよいわけでもありません。
1人当たりの旅行支出が大きいのがヨーロッパやオーストラリアからの旅行者の特徴。2016年7-9月期のデータによると、全体平均の旅行支出額は155,123円。ですが、たとえばロシアは221,844円、イタリアは215,204円、ドイツは204,063円、オーストラリアは200,008円と、他の国々に比べて高い支出額を示しています。
アジア圏に比べヨーロッパからの旅行者の滞在日数は長く、支出の多くは宿泊代の割合が大きいですが、長く滞在すれば自ずと飲食や娯楽サービス、買い物にかける支出も増えます。日本の旅を楽しむために長く滞在したいと思っているわけですから、多言語対応など彼らが満足できるような体制を用意しておくことも大切でしょう。