執筆:太田正隆/JTB総合研究所 主任研究員
旅に行くことは楽しいものである。パートナーとの二人旅、仲間とのグループ旅行、家族旅行、団体旅行等メンバーはその都度変わってもいい。景観や体験を共有することで、さらに楽しさは倍増し想い出になる。世代や国を超えてこれはどの人にとっても同じであろう。一人旅も悪くない、ただし旅先にもよるが。
予約が取れない人気の次世代型ホテル
ロボットスタッフが運営する「変なホテル」へ行った。フロント、クローク、ルーム内でもロボットが活躍するというサービス業の次世代を感じさせるホテルである。
こうしたロボットとAI技術等が組み合わさってインダストリー4.0(第四次産業革命)とともに、人間の生活はより快適になる。近い将来身近になるであろうこうした生活体験を「旅とコミュニケーション」というキーワードで体験した。
到着直後からのエンターテイメント
ハウステンボス駅近くからシャトルバスに乗った。韓国からの家族連れ5名と日本人一家4名。そして一人旅の私。フロントに行くと窓口は3つあり、綺麗なヒューマノイド型ロボットのお姉さんが1人と恐竜型ロボットが2人(?)。お姉さんの窓口は誰も行かない。
フロントの前では、日本の小学生も韓国の小学生も驚嘆の声と激しい写真のシャッター音の嵐。大人も子どももフロントに向けてスタッフの写真を撮るのを初めて見た。チェックインもやり方がわからず、それが楽しそうな会話へと。2組の家族は国籍を超えて到着直後から楽しんだに違いない。私を除いては。
言語の壁もAIで簡単に
片や一人旅の私は、最初に日本語、英語、韓国語、中国語のなかから言語を選択しスタート。
恐竜のスタッフ君の指示通り「おおたまさたか!」と彼に向かって予約名を言うこと3回。わかってもらえず独特の機械音で「スタッフを呼びますか?!」との返答。叫ぶように言うと5度目でようやく反応。タブレットにカタカナで氏名がでて、次いで「漢字で氏名をお書きください」との指示。
こんなことも隣の日韓の家族連れは、ワーワーキャーキャーと楽しんでいる。
体験の共有ができない
部屋に入るとキュートな人形が挨拶と利用方法について声を掛けてくれる。
一人旅のおじさんの悪戦苦闘の始まり。言語はチェックイン時の言語で対応するようである。彼女?の名前を呼ぶと起動するらしい。
「ちゅりーちゃん!電気つけて」とか「モーニングコールをお願いします」とか。夜中におじさんが一人でちゅりーちゃんに何度も声を掛けながら悪戦苦闘する姿を想像して欲しい、怖い。同じ空間で共有することができれば笑い話。
旅を通じて素敵な景観、美味しい食べ物、そして初めての体験や失敗等を共有することは旅の醍醐味であり、隣で狂喜乱舞する日韓の家族を見て強く感じた。
遠くない未来においてAI、ロボット技術等を活用することで、多言語、多様な情報提供は可能になると思うが、こうした機能だけではなく不自由や失敗も含めた旅先での体験が大きな楽しみであり、国籍を超える。一人旅の楽しさは次回にでも。
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太田正隆JTB総合研究所 主任研究員
インバウンド及びコンベンションの企画運営を始め、企業ミーティング、インセンティブ、トレードショー、イベント等に長年従事。各国のMICE事情、地域のMICE戦略策定、MICEビジネス構築、誘致計画、プロモーション計画の策定やマネージメント、マーケティング等、日本における数少ないMICEのエキスパート。