コラム
2016/07/11
中国人旅行者とスマートフォン
私たち日本人が旅行の行き先を決める際にインターネットを活用するように、訪日外国人もインターネットを使ってさまざまな情報を調べてから日本を訪れます。このコラムでは、訪日外国人旅行者のなかで最も訪日者数が多い中国人観光客が、どのようにインターネットを活用しているのかを探ります。
モバイルユーザーが増えている中国のインターネット事情
2015年の訪日外国人旅行者数は1,973万人。なかでも中国からの旅行者は2013年に131万人、2014年に240万人、2015年に499万人と、ここ数年で急激な増加を見せています。
中国のインターネット利用者数は6憶8,826万人で、普及率は人口全体の50.3%。都市部はもちろんのこと、地方部でのユーザーの拡大も最近は顕著です。ネット利用者のほとんど、約8割以上がスマートフォンをはじめとしたモバイル端末を使ってインターネットにアクセスしています。中国では家庭や公共エリアでの無線ネットワークの整備を政策として推し進めていますので、「はじめてのインターネット利用がスマートフォン」という人たちが年々増えているようです。
中国のインターネットの事情は独特で、言葉の壁以外に制約がいろいろとあります。それはGoogleやYahoo!、Facebook、Twitter、YouTubeなどの日本でもよく使われているメジャーなウェブサービスが使えないこと。そのかわり同じようなことができる中国独自のウェブサービスがあります。たとえば、中国で検索エンジンといえば、GoogleやYahoo!ではなく、百度(Baidu)のほうがメジャーですし、メッセージアプリでは、LINEではなくWeChat(微信)などがよく使われています。
旅行前に調べること、旅行中に調べること
団体ツアーの利用が多い中国からの旅行者は、訪日の1~2ヵ月前には少なくともどこの都市に行くかを決め、ツアーチケットや航空券などを手配しているようです。日本政策投資銀行と日本交通公社がまとめた「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年度版)」によると、旅行先である日本の情報の集め方として、インターネットを使いながら旅行ガイドブックや友人からのクチコミなどを組み合わせて決めているようです。
旅行日程のなかで自由に行動できる時間がある場合、観光スポットや観光地について、およそ7割近くの人たちが訪日前に行き先を決めています。それに対して、買い物スポットや食事をするお店などは、事前に下調べをしているとは思いますが、約5割の旅行者が日本についてから行き先を決めています。ひとくちインバウンド施策といっても、業種によってプロモーションを行うタイミングや方法が異なってきます。
たとえば、観光地や宿泊施設では訪日前に具体的な行き先の候補として挙げてもらうことが重要です。インターネットなどで情報収集をする際に知ってもらえていることが大事ですから、英語や中国語など多言語に対応したウェブサイトを事前に用意しておくことは必須といってもよいでしょう。
飲食店や小売店の場合は、訪日前の事前情報収集だけでなく、訪日中にその場で決める割合が高いですから、ポスターやパンフレット、店内POPなど店頭での受け入れ体制を整える必要があります。また、お店を訪れた外国人旅行者がソーシャルメディアに投稿することを想定して、SNSアカウントやハッシュタグなどをあわせて準備しておきたいところです。
中国人旅行者の一番の不満は「言語」と「ネット環境」
日本を訪れる中国人旅行者が不満に思うのは「中国語や英語が通じない」という言葉の問題と「Wi-Fi環境がない・充実していない」というネット環境の整備の問題。Wi-Fi環境を用意して「中国語でWi-Fiありますよ」と掲示しておくだけで、旅行者のみなさんは安心するものです。また、翻訳したパンフレットやチラシをタブレット端末で見せてあげれば、コミュニケーションもスムーズに進むことでしょう。
スマホ片手に日本を旅する中国人旅行者を取り込むためには、多言語化とネット環境の整備、インターネットを使った情報発信がより重要になってきていますね。