訪日外国人旅行者数が出国日本人数を上回った2015年。昨年、日本を訪れた外国人は、約1,974万人を数えました。前編に引き続き、日本のインバウンドを取り巻く状況について探っていきます。
宿泊施設が足りない?!
訪日外国人数は今後も順調に拡大していくと予想されますが、これからの課題としてあげられるのが宿泊施設の不足問題。東京や大阪では客室稼働率が80%を越えるなど、かなり逼迫した状況です。実際に国内旅行や出張でホテルが取れず困った経験をされた方は多いのではないでしょうか?
せっかく日本を訪れたいと思っていても、泊まる場所が思うように選べなければ、旅の楽しみも半減してしまいます。現在、客室稼働率が最も高い都道府県は、大阪。次いで、東京、京都、愛知、千葉と続きます。外国人旅行者が日本を訪れるための手段といえば、そのほとんどの旅行者が空路を利用します。なかでも利用率の高いのは成田空港、関西空港、羽田空港。国際空港を起点に旅のルートが決まるため、東京と大阪での宿泊のニーズが集中するのはやむを得ないのかもしれません。
加えて、はじめて日本を訪れる旅行者は、まずは日本らしい場所を訪れようと、東京、大阪、京都という、いわゆるゴールデンルートを巡りますから、なおのこと、東京や大阪での宿泊需要が高まることになります。日本を訪れる外国人旅行者がこのまま増え続ける限り、この傾向は大きくは変わらないことでしょう。
地方から伝える日本の魅力
首都圏や関西圏の大都市部では慢性的に宿泊施設が足りない状況ですが、日本全体でみると客室稼働率50%を切る都道府県もあり、現在の宿泊施設をうまく活用すればまだまだ余裕があります。
宿泊施設といってもタイプはさまざま。なかでも、リゾートホテル、シティホテル、ビジネスホテルのようなホテルタイプに比べ、旅館の利用は少ないのが現実です。1泊2食が前提となっている宿泊のスタイルや温泉のような共同浴場の利用に不慣れなことなどが課題としてありますが、日本に興味を持って訪れる外国人旅行者のみなさんにとって、旅館は日本の文化を体験する場として最適な場所だともいえます。
観光やレジャーを目的に日本を訪れた外国人旅行者が訪日前に期待していたことの第1位は、「日本食を食べること」でした。「温泉に入ること」や「自然や景勝地の観光」も人気が高いコンテンツですが、旅館はこれらのニーズを一度に叶えられるぴったりな場所。旅館を中心にして日本の魅力を外国人旅行者に伝えていくことは、とても可能性があると思います。
訪日外国人旅行者の受け皿となる、周辺エリアと連動した観光ルートをつくることも大事なことです。定番の観光地を結ぶ東京~大阪間のゴールデンルートだけではない、地方空港を玄関口とした新しい観光ルートがつくれたら、日本のインバウンドは新しいステージに進むことでしょう。
2020年の東京オリンピックに向けて
「東京オリンピック開催までにインバウンドの対策をすればよいかな」と、2020年を目安につい考えがちですが、今年の夏に開催されるリオ五輪が終われば、次は東京! と、一気に日本への注目が高まります。オリンピック観戦のために初めて日本を訪れる旅行者が増えるのはもちろんのこと、これまでに訪れたことのある外国人旅行者も、オリンピック観戦をキッカケに二度目、三度目の訪日を考えることでしょう。ロンドンや北京など、これまでのオリンピック開催地の観光客数の推移をみてみると、インバウンド需要は開催決定をキッカケに大きくなり、開催後も長期間にわたって増え続ける傾向にあります。
はじめて日本を訪れるのであれば、観光の中心は東京と大阪を結ぶゴールデンルートとなりますが、リピーターであれば、日本の文化を深く体験できる地方へ観光を望む人たちが増えてきます。
オリンピックというと開催地の東京だけに注目が集まりがちですが、その波及効果は日本全体に広がっていくことが予想されます。
日本全国に広がるインバウンドのチャンス
訪日外国人旅行者は年々増え続け、インバウンド消費も増えていますが、実際に外国人が訪れているのは東京と大阪を結ぶゴールデンルートの観光地が中心で、日本の各地までその恩恵が行き渡っているわけではありません。ですが、日本を訪れるリピーター旅行者が増え、日本の文化をより深く体験したいと考えれば、今後は地方の観光資源が注目されることになるでしょう。外国人旅行者に快適に旅をしてもらうために、効果的な情報発信や受け入れ体制の整備など、やらなければならないことはたくさんありますが、できることから少しずつはじめていきたいですね。
◆次回は「情報発信で大切なことは多言語対応とネット配信(仮)」をお届けします。
お楽しみに!!