活用事例
柔軟性が可能にする
世界に向けた地域文化の情報発信
石川印刷株式会社 代表取締役 兼 能登カルチャークラブ 代表
佐味貫義様
日本を訪れる外国人旅行者数は年々増加しており、2014年には過去最高となる1341万人を記録しました。彼らの最大の障壁となるのは、やはり言語の壁。そこで、MC Catalog+を導入したことで世界に向けた情報発信を可能にした、地域情報誌『Fのさかな』を発行する能登カルチャークラブ様にお話を伺いました。
キャッチフレーズは「能登の逸品を世界に」。
― 能登カルチャークラブさんで発行しておられる『Fのさかな』は、日本タウン誌・フリーペーパー大賞2014のグルメコンテンツ部門で最優秀賞を受賞されました。非常に独創的な冊子をつくっておられますが、そもそも設立された背景はどのようなものだったのでしょうか。
佐味様 母体は石川印刷という、地域に根差した印刷会社ですが、平成の大合併により、大口顧客でもあった自治体が激減しました。顧客が減ったわけですから、当然競争が激しくなります。実際に売上も3分の1まで落ち込んだ時期がありました。ただ、われわれのような小さな会社では、安売り競争に安易に巻き込まれてしまうと、仕事はあっても利益が出ない状況に陥ってしまいます。そこで活路を見出したのが、フリーペーパーの発行でした。
フリーペーパーですから、お金儲けを目的にしているわけではありません。ただ、利益を捨てるほどの仕事をするのであれば、仕事が減って生まれた余力を、地域の情報発信に向けられればいいと思ったのです。下手に儲けても半分は税金で持っていかれちゃいますから、それならば税務署の代わりに、われわれが地域を宣伝しよう、というわけです(笑)
― いい税金の使い方ですね(笑) 能登の数ある文化のなかで、なぜ魚を焦点にしたのでしょうか。
佐味様 能登には多くの文化があります。とくに七尾は、前田利家が大名となった地であり、長谷川等伯の出身地でもあります。京都との行き来も盛んでしたから、茶の湯や俳句といった文化もありました。さらに2011年6月には、佐渡島とともに世界農業遺産の認定を受けました。人の手の入っていない、自然のままの農村地帯であったためです。発信できる文化は探せばいくらでもある。それが能登という地域でした。
地域情報というと、メインは観光ですよね。しかし、われわれが観光を取り上げる必要はあまり感じませんでした。観光情報誌などは、ほかにいくらでもありますから。そこで考えたのが能登の生活文化の発信です。能登の生活と切っても切れないのが農業、そして漁業です。能登の魚はとても美味しく、都会の方が口にされると、皆さん感動なさいます。漁獲高は漁業人口の減少もあって、そんなに多くないことから希少価値も高く、能登産の海産物が市場では高値で取引されるケースも多くあります。そんな能登の魚をもっと多くの人に知ってもらおう、というのが『Fのさかな』の始まりでした。その最初のキャッチフレーズは「能登の逸品を世界に」です。
「MC Catalog+」はキャッチフレーズを現実のものにするツール。
― 魅力的なキャッチフレーズですね。「世界に」といえば、北陸新幹線の開通で、外国人観光客は増加しましたか。
佐味様 まだ肌感覚として実感できるレベルではありませんね。ただ、金沢はすでにホテルの満室が続いているようですし、和倉温泉でも宿泊客が3倍になったと聞いています。ただ、今の状況は、金沢の宿泊施設が不足しているので能登まで来る、というのが正確でしょう。
ただ、外国人観光客が徐々に増えてきているのは確かです。中部と北陸を結ぶ昇龍道(ドラゴンルート)を通って、セントレア(中部国際空港)からまっすぐ能登に来られる方もいらっしゃいます。大都市には及びませんが、これから少しずつ知名度も上がっていくことを期待しています。― 今回、「MC Catalog+」を導入したことで、多言語対応のフリーペーパーとなりました。キャッチコピーに「世界」という言葉があったように、最初からワールドワイドな情報発信を見据えておられたのでしょうか。
佐味様 最初から地球規模で考えていたわけではありませんが、世界に通用するものが能登にあるとは思っていました。世界農業遺産に認定されたのも、その表れでしょう。それをしっかり売り出していこうと思って大上段に構えたキャッチコピーをつけましたが、その信念は今も変わりません。
能登にいらっしゃる外国人の多くは、台湾、香港、韓国、中国といった近隣アジアの方々です。もちろん欧米の方々もおいでになりますが、一番多いのはアジア地域ですから、この製品で英語、韓国語、中国語の簡体字と繁体字に対応できたのは、このキャッチコピーを現実のものにするためにも、大きな利点です。
時間もコストも削減できる、使い勝手のいい製品だと思います。
― 導入にあたって、どのような検討をなさったのでしょうか。
佐味様 実は私は新しいもの、珍しいものが好きなので、すぐ飛びつくんです。たとえばWEBページの開設やPDF版の配布サービスも早くから始めていましたし、さらに言えばDTPに取り組んだのも早かった。新しいものが出たら、まずはどんなものだろうかと積極的に試してみたくなるんです。もちろん無駄なものもありましたが、動かないことには始まりませんからね。フリーペーパーにコストをかける、という点で反対意見がなかったわけではありませんが、幸いなことに、テレビに取り上げられたりして注目を浴びたことで、導入することができました。
ほかにも類似のサービスはありますが、納得できない部分がなかった、というのが導入の決め手でしょうか。使用感も、考えてつくられた製品だと思います。ストレスもほとんど感じず、よくできた製品だと思います。
― ありがとうございます。
佐味様 多言語対応機能も、固有名詞など辞書登録をする必要はあるものの、非常に使い勝手のいい機能だと思います。もちろん正確な翻訳ではありませんが、文献ではないので、意味が通じればそれで問題ないわけです。普通にあるインターネット翻訳よりは精度の高い翻訳をしてくれていますしね。今までなら、まず翻訳会社に依頼して、それを今度は地元在住の外国人の方にネイティブチェックをしてもらうという、非常に時間もコストもかかる方法を採るしかありませんでした。それが削減できたというのは、意味のあることだと思います。
― 誌面にあるQRコードをスマホやタブレット端末でタップすることでリンク先に飛ぶ機能など、多言語対応以外の機能も活用していただいていますね。
佐味様 使える機能はどんどん使っていこうと思います。たとえば最新号では、ドローンを使った七尾西湾の空撮動画のリンクを貼ることで、より魅力的なPRができるようになりました。ほかにも、写真のスライド機能を使えば、誌面に掲載できなかった写真が見られるようになるので、今後はぜひ利用していきたいですね。
「MC Catalog+」の導入が創出する副産物にも密かに期待しています。
― 本製品を通じて、今後なにかやってみたいことはありますか。
佐味様 ドローンで撮影した動画と音声言語の組み合わせができたらいいですね。そうすれば、ドローンの映像を使って、各国言語で能登の情報を発信することもできます。これが実現できれば、大変素晴らしいことだと思います。いろいろなアプリケーションと連携することで、もっと活用の幅は広げられると思っています。使い方次第で、効果は十分に期待できるでしょう。
役所のパンフレットの自動翻訳などにも使える、いいツールだと思います。すでに、これを活用した観光パンフレットの仕事もありますし、われわれも参画している「カーたび」にも応用することができないかな、と考えています。
― 「お金のためではなく始めた事業」の結果、「お金につながる仕事」に結びついたんですね。
佐味様 そうですね。そうした副産物というのが重要です。『Fのさかな』について言えば、われわれは印刷会社なので、編集を行った経験はほとんどありませんでした。創刊当時は外部委託で発行していましたが、持ち出しが続くのも厳しいため、すべての工程を自社で行うことにしました。そうしたところ、レイアウト力や取材力など、通常の印刷会社にはないスキルを獲得でき、お客様からも「こんなものがつくりたい」という相談も受けられるようになりました。営業職であっても、対応ができるようになったことでビジネスの幅は広がったと言えるでしょう。
途中でやめようかと思ったこともありましたが、何より社員が喜んでつくってくれるので、ここまで続けることができました。『Fのさかな』を始めたことで、方々から注目していただけるようになりました。われわれの決断は正解だったと言えるでしょう。新たな試みとしての「MC Catalog+」の導入が、こうした副産物を生み出してくれることにも、密かに期待しています。
- 能登カルチャークラブ
- 石川・能登地域の情報誌『Fのさかな』(季刊)を発刊。地域文化を織り交ぜて、「能登のさかな」についての情報を発信。日本タウン誌・フリーペーパー賞2014のグルメコンテンツ部門で最優秀賞受賞。ほかにも数多くのフリーペーパーに与えられる賞を受賞。
- 〒926-0021 石川県七尾市本府中町ヲ部8-2
- 能登カルチャークラブ webサイト